【山陰地方で初!低酸素室・高酸素室の整備】

 島根大学人間科学部身体活動・健康科学コースでは、ヘルスサイエンス実験室に低酸素室・高酸素室を整備しました。

 

 

 この低酸素室・高酸素室は、山陰地方におけるスポーツ科学や健康科学の拠点となることが期待されています。低酸素室は、最大3人程度まで同時に運動が可能な規模の広さを有しており、このような規模・能力の低酸素室は中国地方でもほとんどなく、山陰地方では初めて整備されました。

 

 低酸素室は、酸素濃度をコントロールすることで、標高に換算して1,800メートルから最高で3,600メートル相当の低酸素環境を再現できるものです。標高3,600メートルというのは、富士山の八合目と頂上の中間付近の高さに相当し、酸素濃度は13.6%という低酸素環境となっています。

 

 富士山の頂上付近の低酸素状態を再現できると説明しましたが、実際、どのようにして低酸素状態を作り出すのでしょうか。その仕組みは、外気をコンプレッサー(圧縮機)で圧縮し、制御装置へ送ります。制御装置に内蔵された高分子膜を通して高酸素空気と低酸素空気に分離することで、酸素濃度16.8%~13.6%の常圧低酸素環境を作り出すことが可能となります。

 

 

 低酸素環境では、呼吸による酸素の取り込みが悪くなり、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和濃度)が低下し、人によっては息苦しさを感じるようになります。低酸素環境で平地と同じトレーニングを行うと、より心肺負荷をかけることができるので、筋肉や関節などに無理な負荷をかけずに効率よく心肺機能をトレーニングすることができます。また、このSpO2の低下は、高山病の主要因となっており、低酸素室でトレーニングをすることで体が低酸素状態環境に馴化し、高山病の予防に役立つとされています。

   

 

 

 逆に、高酸素室(高酸素環境)は、低酸素室でのトレーニング後に下がったSpO2の値を正常な値に素早く戻すことができるため、トレーニング後の回復施設として利用できます。

    

 

 今後は、スポーツ科学への貢献として、アスリートを対象とした競技力向上のための効率的なトレーニングに低酸素室・高酸素室を利用していくことも検討しています。また、地域貢献として、重い負荷をかけたトレーニングや高地トレーニングへの応用といった、トレーニング支援を地域の生徒・学生を対象として行う際や、地域住民の方々の健康づくりのための短時間で効率的な運動や、登山のための簡単で手軽なトレーニングを行う際に低酸素室・高酸素室を利用することに期待が寄せられています。