学部長の挨拶

  82名の新入生を迎えて、いよいよ島根大学人間科学部がスタートしました。 

 「僕の前に道はない、僕の後ろに道はできる」。高村光太郎「道程」の一部です。私たちは、11人が自分自身の道を進んでいきます。それぞれの人にとって、その前に道はなく、それぞれの人がたどる後ろに道ができます。しかし、私たちは1人で道を進んでいくのではありません。多くの人との出会いがあり、さまざまなやり取りをしながら進んでいきます。11人の学生が自分の道を作っていく過程を、人間科学部という場で共有できることをとても嬉しく思います。 

 人間科学部は今年から始まった新しい学部です。この学部の前に道はなく、新入生がこの学部で学び、やがて卒業していく後ろに人間科学部の道はできます。したがって、新入生は、自分自身と人間科学部という二重の意味での道の開拓者となるわけです。この貴重な経験を意味あるものとして味わってもらいたいと思います。 

私たち教職員は、これまで他の部局や他の大学で豊富な経験を持ち、一丸となって人間科学部をスタートさせるための準備を行い、学びの場の準備をしてきました。新しい学部というシステムの開始に伴い、多少の混乱はあるかもしれませんが、それにもまして新しいものを作っていく意気込みや情熱に触れることから得られることが大きいと思います。 

 大学の授業では、答えがわかっていない問いへの答えを見つけていくという学びが中心となります。答えも1つとは限りません。答えを導くアプローチもたくさんあります。4年間の大学生活の中で、学生にはそういった物事の考え方の基礎を時間をかけて身につけていってほしいと思います。 

 人間科学部には様々な教員がいて、いろいろな領域の研究をしています。あらかじめ学びたいと思っていた領域のことはもちろん、それ以外のこともぜひ学んでほしいと思います。それぞれの教員が専門としている学問は、山に登る1つの道のようなものです。人間科学部にはたくさんの道があります。どの道から山を登っても、平地にいてはわからない景色を俯瞰して見ることができます。別の道から登っても、また違う見え方を得ることができます。学生には、広く好奇心をもって学んでほしいと思っています 

 授業は宝の山です。それぞれの教員の授業の中に、意味のあること、役立つこと、おもしろいことがたくさんあるはずです。ぜひそれらを見つけるようにしてほしいと思います。学生が能動的にそれらを見つけ、問題の発見とその解決の導き方を身につけていけるよう、授業の中にはさまざまな仕掛けが設けられています。もちろん、授業だけが学びの場ではありません。友達とのおしゃべりや、先生との授業以外での話、地域の人々との関わりの中にも学ぶことはたくさんあります。人間科学部には、そのようなさまざまな学びの場があり、学生が自分の力を伸ばしていけるようになっているのです。 

 未来の受験生の皆さん、そして関係者の皆さん、人間科学部は、人間についての新しい学びの府を構築しようという意欲にあふれてスタートしました。ぜひ、教職員と学生で作り始めた人間科学部の生の声を聞きに来てください。新しい試みはスタートしたばかりです。私たちと一緒に人間科学部の歴史を作る営みに参加し、自分たちの未来を切り開いていきませんか!