「デイサービス アイル松江」松岡さまインタビュー

公開日 2017年12月04日

 人間科学部心理学コースの学生が「人間科学地域実践入門」の一環で,アイル山陰株式会社「デイサービス アイル松江」に見学に伺いました。 

 アイル山陰株式会社 常務取締役 松岡 浩一さまに授業の感想や人間科学部への期待をお伺いしました。

<授業の感想>
Q1:心理学コースの学生の印象は?
 第一印象は女性の割合が多いな,と感じました(44名中34名が女子学生)。心理学コースの特徴でしょうか。私は工学部出身だったので特にそう思ったのかもしれません。全体として「礼儀正しく“いい子”にしているな」と感じました(笑)。
 性別の話で言うと,介護の分野には「同性介助の原則」があります。身体を拭くとき,男性利用者には男性スタッフが担当します。女性利用者でも介護度が上がってくれば,体力的に男性スタッフしか担当できない,という例外はあるのですが,介護をする上でそういった心理面の配慮は欠かせません。
Q2:大学1回生から学外で実習することについて
 早いとは思いません。とても良いと思います。今は中学校2年生から職業体験として,3日間,さまざまな職場に中学生が出向きますね。実際に体験することによって,見えてくるものがあると思います。
<人間科学部に期待すること>
Q3:学生へ期待すること
 今日の見学では,「独居の高齢者との関わり方(の可能性)」というお題でブレーンストーミングというグループワークを行いました。「挨拶する,弁当を配達する,昔の遊びを教えてもらう・・・」等,たくさんのアイデアを出してくれました。その半分でもいいから実践して欲しい。そうすれば,良い社会になっていくと思います。
 熱意があって真面目な人ほど,矛盾に耐えきれずに心が折れてしまうことも・・・。いろいろな体験を通して,生身の人間への関わりを学ぶ事が大事だと思います。そのためにもコミュニケーションが重要です。高齢者にとっての「生きがい」や「生きる上での楽しみ」に寄り添うことを学んでいって欲しいです。例えば,軽度認知症の方の発言には「作話」と「真実の話」が混在しています。私たちはそれを読み取らなければいけません。そして,経験を積むことでそれがだんだん可能になってきます。その方に関わる中で分かってくるのです。
 3回生になられたら,当施設において継続的に利用者さんに関わりをする実習が始まります。その時,1つ2つの自分の課題を持って,来て欲しいと思います。その課題を「自分で実践して検証する→議論する→検証する→・・・」という風に繰り返しながら学びを深めていって欲しいと思います。
Q4:人間科学部に期待すること
 私はAI(人工知能)の研究に携わってきた経験から,AIやロボットが高度に発達した社会についてよく考えます。AIスピーカーや顔認証などの技術が発達すれば,個人情報が全て分かってしまうというリスクが生じます。しかし,介護の負担が減ったり,徘徊老人を楽に探すメリットが得られるでしょう。
 私は「矛盾の整合性」と呼んでいますが,何事にもメリットとデメリットは必ず生じます。ロボット文化と人間文化をどのように整合させるのか。いかにバランスを取るのか。私たちはいま痛烈に問われています。
 「科学技術」と「生身の人間の生」との間の「矛盾の整合性」について考えることは「人間らしさとは何か?」という問いにもつながるでしょう。人間科学部にはそのような問いに取り組まれることを期待しています。